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雑誌会(4/18)回答 加賀

質問 UVの吸収ピークとアニオン配位子との関連性はあるのか。 回答 アニオン配位子とUVの吸収ピークに関連性が見られました。 それを説明します。 そのためにはまず初めに600 nm付近の吸収がどのような吸収なのかを明らかにする必要があります。 他の論文で同じ配位子を有するCu(III)(OH)の錯体のUVスペクトルに対して600 nm付近の吸収が配位子からCuのd(x^2-y^2)の遷移に由来すると報告されていました。 そのため今回のNi(III)の錯体に関しても配位子からNiへの遷移だと考えられます。 しかし、Cu(III)はd8であるのに対してNi(III)はd7であるという違いがあります。 以下のエネルギー準位図から低スピン状態の平面型ニッケル(III)錯体に関しては、d(xy)のSOMOに対しての遷移であると考えられます。 次にNi(III)に結合したモノアニオンとUVの吸収波長の関係をまとめます。 UVの吸収波長が小さい順(LMCTのエネルギー準位差が大きい順)に列挙すると以下のようになります。 モノアニオン : 吸収波長 (nm) OAc^-1 (酢酸イオン) : 510 nm HCO3^-1 (炭酸水素イオン) : 520 nm NO3^-1 (硝酸イオン) : 560 nm Cl^-1 (塩化物イオン) : 600 nm よって酢酸イオンを有するNi(III)錯体のLMCTのエネルギー差が最も大きく、塩化物イオンの時に最もエネルギー差が小さくなるということが分かります。 次に配位子がどのように変わるとエネルギー的にどのような変化が生じるかを説明します。 今回配位子のHOMOから金属のSOMOへの遷移だと先ほど述べました。 モノアニオンの配位子が変わることによってエネルギー準位が最も変動するのは金属の軌道のエネルギー準位だと考えられます。その理由はモノアニオンの配位子は金属に直接結合しているからです。配位子のHOMOの軌道よりも少しエネルギー準位が高い金属のSOMOがあると考えると、モノアニオン配位子がより強く金属に結合する方がSOMOの軌道が不安定化し。エネルギーギャップが大きくなると考えられます。 モノアニオンの配位子がより金属に強く配位すると、エネルギーギャップが大きくなると説

4/18 雑誌会回答 上條

雑誌会(4/18)の質問に対する回答です。 Jan Paulo T. Zaragoza, Maxime A. Siegler, and David P. Goldberg https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/jacs.8b00350 質問: 基質のフェノール誘導体の電位について 筆者らはこちらの論文を参考にしていました。 Karlin, K. D. and coworkers., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 9925 https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja503105b 質問: 錯体の安定性について マンガンオキソ種に関しては発表中述べたように溶液中でも不均化反応は起こらなかったとの記述がありました。ほかには特に実験はなされていませんでしたが、錯体合成の際、精製過程でカラムを用いでいるのである程度の安定性はあるのではないかと考えています。

A Reactive Manganese(IV)−Hydroxide Complex: A Missing Intermediate in Hydrogen Atom Transfer by High-Valent Metal-Oxo Porphyrinoid Compounds

Jan Paulo T. Zaragoza, Maxime A. Siegler, and David P. Goldberg https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/jacs.8b00350 ゴールドバーグさんのマンガンヒドロキソ(オキソ、アクア)に関する論文です。 昨年の中西さんの雑誌会( https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.7b07979 )と同様の配位子系を用いてマンガン錯体を作成し、例の少ないマンガン(IV)ヒドロキソ錯体のX線構造解析に初めて成功しています。 この錯体はより強力と考えられるマンガン(V)オキソ錯体や強力な酸化剤である鉄(VI)オキソよりも強い酸化性能を示すことが分かりました。(フェノール誘導体に関する反応) 同位体効果や、マーカスプロット、ハメットプロットからHATで反応は進行しておScheme2のAの機構で進んでいると考えられます。