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11月, 2019の投稿を表示しています

雑誌会 (191120) の解答

雑誌会 (191120) の解答 Well-Defined Silica-Supported Tungsten(IV)−Oxo Complex: Olefin Metathesis Activity, Initiation, and Role of Brønsted Acid Sites  abstract  本論文の実験は、大きく分けて2つの目標を以て行われた。1つ目は、既にメタセシス活性を有していることが明らかにされているタングステン錯体を表面にシラノール基が生えているシリカに担持することで、反応活性を向上させることである。2つ目は、担持によって錯体が二量体になり、失活することを防ぐことでどのようなメカニズムでメタセシス反応が進行しているのか解明しようとしたことである。  シリカに対して加熱処理することでシリカ表面のシラノール基密度を制御するといった興味深い操作も記載されており、私の研究にも応用できそうな内容だった。 Q1. シラノール基 (シリカ表面のヒドロキシ基) の定量測定はどのように行っている?  論文中には定量法についての記述は見られなかったが、日本アエロジル (株) 営業部 小澤匠吾氏より頂いた資料によると、「圧力 15mmHg以下、温度120 ℃で3時間乾燥した後、LiAlH4と反応させる方法」が正確かつ簡易であるらしい。 本論文の補足資料を見ていただくと分かることであるが、本論文中にて使用されているSiO 2-x (正確には、 AEROSIL®200 ) は乾式シリカという分類のであり、多孔質ではなく、表面にシラノール基が突出している構造をしている。  また、 AEROSIL®200 という名前から容易に推測できると思われるが、日本アエロジル (株) は本論文にて扱われている AEROSIL®200 を日本にて販売しておられる企業である。従って、上記のシラノール基定量法を本論文の著者たちも行っていた可能性は大いにあると考えられる。  さらに、本投稿のためにシラノール定量の方法に関して調査していた際、新たなシリカ表面シラノール基の定量分析に関する記事が2か月ほど前に発表されていることに気が付いた。この記事によると、従来のシラノール定量法と比較して非常に有用であるらしい。 Q2. スライド p.10 のcon

雑誌会(191003)の回答

abstraction 本論文は、分子内に水素結合を持つTMPA配位子を用いて銅錯体を合成し、単核銅スーパーオキソ錯体の安定化を行なった論文です。pivalamido(=NHCOC(CH 3 ) 3 )を置換基として用いた際に、最も高い単核銅スーパーオキソ錯体の安定性を示し、さらに、フェノール系及び弱いC-H結合を有する外部基質との反応において最も高い反応性を示したことを報告していました。 Q.1.単核銅スーパーオキソ錯体の水素結合に関する解釈について まず、単核銅酸素錯体には、side-on型とend-on型の二種類があり、それぞれのMOは下のようになっています。ここでは、end-on型スーパーオキソ錯体について議論しているため、右側のMOについて考えます。 Fig. Molecular orbital diagram of copper(II) superoxide bonding まずはじめに、DFT計算による結果より、proximalのO原子に水素結合をする際のエネルギーがdistalのO原子に対してよりも1kcal/mol程度安定になるとされています。 ここで水素結合は、Cu-O-O平面に対してπ* σ 軌道(Cu-O結合を形成している、二つの電子によって占められている軌道)で結合しています。そうすることによって、proximalのO原子のδ-性が相対的に大きくなり、Cuとの結合力が強くなることでν(Cu-O)が大きくなります。π*ν軌道は電子を一つしか有していないため、水素結合を起こした際の安定性はπ*σ軌道に比べると小さくなります。 Q.2. BArF系のカウンターアニオンを用いる意義 本論文をはじめ、近年多くの金属錯体の触媒反応に関わる研究チームがカウンターアニオンに酸化されにくく、結晶性の高いフッ素系アリールアニオンを用いています。活性種の溶液や固体状態での安定化に大きく寄与し、結晶化を成功させるための一つの選択肢であると考えています。合成条件等は下の論文を参考にしてください。 T. David Harris. Inorg. Chem. 2015 , 54, 359−369