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10月, 2017の投稿を表示しています

Electrocatalytic Radical Dichlorination of Alkenes with Nucleophilic Chlorine Sources

Niankai Fu†, Gregory S. Sauer†, and Song Lin*†‡  † Department of Chemistry and Chemical Biology, Cornell University, Ithaca, New York 14853, United States ‡ Atkinson Center for a Sustainable Future, Cornell University, Ithaca, New York 14853, United States J. Am. Chem. Soc., Article ASAP DOI: 10.1021/jacs.7b09388 Publication Date (Web): October 8, 2017 先日、Mn触媒を用いて、オレフィンを電気化学的にジアミノ化する方法をScienceに報告した、Linらのグループから、ジクロロ化の報告です。触媒は凝ったものを使っているわけではなく、単なるMn(OTf)2です。アルカリ金属を入れておくと良いみたいです。

Direct Comparison of C−H Bond Amination Efficacy through Manipulation of Nitrogen-Valence Centered Redox: Imido versus Iminyl

Matthew J. T. Wilding, † Diana A. Iovan, † Alexandra T. Wrobel, † James T. Lukens, ‡ Samantha N. MacMillan, ‡ Kyle M. Lancaster, ‡ and Theodore A. Betley * , † † Department of Chemistry and Chemical Biology, Harvard University, 12 Oxford Street, Cambridge, Massachusetts 02138, United States ‡ Department of Chemistry and Chemical Biology, Baker Laboratory, Cornell University, Ithaca, New York 14853, United States  DOI: 10.1021/jacs.7b08714 J. Am. Chem. Soc. , 2017 , 139 (41), 14757–14766   概要 :鉄錯体を用いてイミド/イミニル錯体をそれぞれ合成し、反応性を比較している。C–H結合のアミノ化反応においてはイミニル錯体の方が反応性が高いことを示し、イミニル錯体上の(N•)が反応性の向上に寄与することを報告している。 質問 :N K-edge XASにおけるN•に帰属されるピークについて N K-edge XAS でイミニル錯体のみに見られる394.5, 394.8 eVのピークは N 1s からN 2p のSOMOへの遷移に帰属される。 イミド錯体の場合は2p軌道への遷移が起こらないためピークが現れない。 イミニル錯体 2 では、芳香間に電子が非局在化することで安定化しているため、N上にSOMO軌道ができる確率が減少するため錯体6に比べてピーク強度が弱くなる。

Oxidase catalysis via aerobically generated hypervalent iodine intermediates

Asim Maity, Sung-Min Hyun and David C. Powers *  PUBLISHED ONLINE: 16 OCTOBER 2017 | DOI: 10.1038/NCHEM.2873  https://www.nature.com/nchem/journal/vaop/ncurrent/full/nchem.2873.html 酸素分子を酸素源とした超原子価ヨウソ試薬を生成し、様々な酸化反応に適用しています。 理想の酸化剤である酸素分子を酸素源に用いている点と、錯体を用いない酸化反応の論文という点で、参考になると思いました。

Biomimetic Reactivity of Oxygen-Derived Manganese and Iron Porphyrinoid Complexes

Regina A. Baglia, Jan Paulo T. Zaragoza , and David P. Goldberg*  Department of Chemistry, The Johns Hopkins University, 3400 North Charles Street, Baltimore, Maryland 21218, United States Chem. Rev., Article ASAP DOI: 10.1021/acs.chemrev.7b00180 Publication Date (Web): October 9, 2017 Copyright © 2017 American Chemical Society ジョンズホプキンス大、Goldbergのグループによる、Fe、Mnのポルフィリノイド錯体の酸化反応についての総説です。酸化反応をやっている方、酸化還元活性な配位子をやっている方は、イントロダクションでヘムに触れる必要があるかもしれません。 この総説から入って、必要なリファレンスを集めると良いかと思います。触媒反応活性についてはどれくらいまとまっているか分かりませんが、良いのがあればあげてください。

Mechanistically Driven Development of an Iron Catalyst for Selective Syn-Dihydroxylation of Alkenes with Aqueous Hydrogen Peroxide

  Margarida Borrell and Miquel Costas * InstitutdeQuímicaComputacionaliCatal ̀ isi(IQCC)andDepartamentdeQuímica,UniversitatdeGirona,CampusMontilivi, Girona E-17071, Catalonia, Spain DOI: 10.1021/jacs.7b07909 概要 嵩高い置換基を有する配位子をもつ鉄錯体を触媒として用いることで、 様々な基質で高収率・高選択的なシスジオール化を達成しています。  abstract ジオール化反応の律速段階はジオール生成物が鉄中心から乖離するステップということで、 乖離を促すために、嵩高い配位子 5 ‐ tips3 tpaをもつ鉄錯体触媒として用いてジオール反応を行っています。 さらにMg(ClO4)2・6H2Oを添加することでジオールを捕捉することで、 Conv.100%、diol収率87%、epoxide収率13%という達成しており、これまでの配位子の嵩高さとルイス酸を組み合わせることで鉄錯体を比較して優れたマスバランス・ジオール選択性で反応を触媒することに成功しています。 雑誌会質問 立体的に小さい基質はオキソに近づくことができ、エポキシドの生成量が多くなる傾向があるのかどうか。 回答 ビニルシクロヘキサンのような末端の小さなオレフィンの場合では、diol/epoxide=3.8とエポキシドの生成が 比較的 多くなっていますが、直鎖の末端オレフィンと内部オレフィンを比較したときでは、生成比の傾向はバラバラであり、 オキソへの近づきやすさによって、エポキシドの生成量が多くなる傾向は見られないと考えられます。

Generation, Spectroscopic, and Chemical Characterization of an Octahedral Iron(V)-Nitrido Species with a Neutral Ligand Platform

GerardSabenya, † LauraLaz ́ aro, † IlariaGamba, † VladMartin-Diaconescu, * , † ErikAndris, ‡ Thomas Weyhermu ̈ ller, § Frank Neese, * , § Jana Roithova, * , ‡ Eckhard Bill, * , § Julio Lloret-Fillol, * , ∥ , ⊥ and Miquel Costas * , † † InstitutdeQuímicaComputacionaliCatal ̀ isi(IQCC)andDepartamentdeQuímica,UniversitatdeGirona,CampusMontilivi, E17071 Girona, Catalonia, Spain  DOI: 10.1021/jacs.7b00429  概要 非常に不安定な鉄(V)ニトリド錯体を低温条件下で合成し、オレフィンやスルフィドなどの弱いC−H結合をもつ外部基質との反応性を報告しています。 Abstract 鉄(III)アジド錯体を光分解することにより、 N−N 結合を光酸化的に開裂させ、高原子価のニトリド種を合成しています。 Mössbauer、 X-ray absorption spectroscopy 、 EPR 、 DFTなど様々な手法を用いて 鉄(V)ニトリド錯体の特製評価を行い、気相での反応性を検討したところ、ニトリド配位子のオレフィンやスルフィドへの付加反応や 1,4シクロヘキサジエンの水素移動反応に活性であることがわかり、少し機構についても触れています。 雑誌会質問 基質との反応はどうやって行っているのか。 回答 今回の反応は気相反応であり、 TSQ 7000 mass spectrometerを用いています。 これはエレクトロスプレー源に四重極・八 重極・ 四重極が取り付けられており、 錯体溶液をマスに打ち、最初の 四重極で マトリックスから目的のイオンを分離します 。 選択された m/z によって分離されたイオンは、 次の 八 重極 で基質のガスと衝突することで反応が進行し、最後の 四重極で生成物を分析すること

3D Printed UV−Visible Cuvette Adapter for Low-Cost and Versatile Spectroscopic Experiments

Heather D. Whitehead, Julia V. Waldman, Denise M. Wirth, and Gabriel LeBlanc * Department of Chemistry and Biochemistry, The University of Tulsa, 800 S. Tucker Dr., Tulsa, Oklahoma 74104, United States ACS Omega , 2017,  2  (9), pp 6118–6122 DOI:  10.1021/acsomega.7b01310 3Dプリンターを使ってUVの周辺装置を作っています。 細かい実験条件を自身らで調整したり、セルがより安価になったりしています。 SIに動画が乗っていたので、そちらがわかりやすいと思います。 http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsomega.7b01310 3Dプリンターを使って、より効率的に、安価に実験している点は大変参考になると思いました。

Achieving One-Electron Oxidation of a Mononuclear Nonheme Iron(V)-Imido Complex

Seungwoo Hong,     Xiaoyan Lu,   Yong-Min Lee,   Mi Sook  Sei ,   Takehiro  Oha ,   TakashiOgura,   MartinClem ́ ancey,   PascaleMaldivi,   Jean-MarcLatour,   RitimuktaSarangi,    and Wonwoo Nam   DOI: 10.1021/jacs.7b08161     Fe(V)-イミドカチオンラジカル錯体についての論文です。Feイミド錯体は合成法が確立されておらず、その化学はまだあまり知られていません。先行研究において、著者らはtetraamido macrocyclic ligand(TAML)を配位子に持つ単核Fe(V)-イミド錯体、[FeV(NTs)(TAML)]-、( 1 )の合成に成功しました。そこで本論文では、錯体( 1 )を一電子酸化したFe(V)-イミド TAMLカチオンラジカル錯体、[FeV(NTs)(TAML•+)]、( 2 )の合成を行いました。錯体( 2 )は–40ºCで比較的安定であるため、様々な分光学的手法さらに計算化学的手法によって錯体の同定を行い、さらにC-H官能基化反応やナイトレン移動反応の反応性を検討しました。 様々な分光学的手法および計算化学的手法の結果、錯体( 2 )は反磁性(S=0)であることが分かりました。 錯体( 2 )の反応性を検討した結果、C-H結合の官能基化反応では、C-H結合のBDEに対してKIEの値が良い直線性を示したため、錯体( 2 )による基質の水素原子引き抜きが律速段階段階であることが分かりました。また、ナイトレン移動反応では、パラ置換チオアニソールの一電子酸化電位Eoxの値に対してlog k2の値が良い直線性を示したため、電子移動が起こったのちにナイトレンの移動が起こることが示されました。 これらの反応において錯体( 2 )(S=0)は錯体( 1 )(S=1/2)に比べて良い反応性を示します。本論文中では、スピン状態の違いが直接反応性の向上につながっているとは述べられていませんが、より詳細な検討によってそれらが明らかになると面白いと思いました

雑誌会回答 : High-Spin Iron Imido Complexes Competent for C−H Bond Amination

Matthew J. T. Wilding, Diana A. Iovan, and Theodore A. Betley * Department of Chemistry and Chemical Biology, Harvard University, 12 Oxford Street, Cambridge, Massachusetts 02138, United States   DOI: 10.1021/jacs.7b06682 J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 12043 − 12049  ハイスピン状態を有する鉄(III)イミド錯体を初めて単離し、トルエンのC–Hアミノ化反応について報告しています。 その反応性を他の電子構造を有するイミド錯体と比較することで、電子構造が反応性に与える影響について考察しています。 abstract 二座ビピリリン配位子を有する鉄(II)クロライド錯体をカリウムグラファイトで還元することで、出発錯体として鉄(I)錯体を合成しています。 この鉄(I)錯体とアダマンチルアジドとの反応から、鉄(III)イミド錯体の生成を確認しています。 EPR,SQUID,DFT計算から、このイミド錯体はこれまで前例のなかったハイスピン(S=5/2)であることがわかりました。 この錯体はホスフィンへのイミド基の移動反応や、シクロヘキサジエンからの水素引き抜き、またトルエンのCHアミノ化に対して活性でした。 その反応性と電子構造の関係について、分子軌道を用いて考察しています。 質問 平面三角形の配位子場分裂について 等価な配位子からなる平面三角形では、各配位子がxy平面上に存在すると仮定する以下のような準位となります。 オキソやイミドが配位する場合は、 π相互作用などの考えやすさから、 z軸方向から配位すると仮定することが多いようです。 その際、以下のように分裂すると考えられています。平面三角形がxz平面に存在すると仮定すると、dxzがエネルギー的に不安定化し、xy平面に存在するdx2-y2, dxyは安定化します。 dz2については、4s、4pz軌道との混成が起こるため、安定化して上記の準位となるそう

Spin Changes Accompany Ultrafast Structural Interconversion in theGround State of a Cobalt Nitrosyl Complex

Hugo J. B. Marroux, Basile F. E. Curchod, Charly A. Faradji, Timothy A. Shuttleworth,Hazel A. Sparkes, Paul G. Pringle, and Andrew J. Orr-Ewing* DOI: 10.1002/anie.201707508  Co(II)のニトロシル(•NO)錯体についての論文です。ニトロシル配位子は金属中心に様々な形式で配位することが知られています。この論文では、窒素がsp的に配位した直線構造と、sp2的に配位した屈曲構造の間の相互変換を、 二次元赤外分光法 と呼ばれる方法で追跡し、平衡定数、速度定数を求めています(結晶構造ではディスオーダーしています)。  この錯体ではNO直線配位と屈曲配位の相互変換に際して、スピン状態もシングレットからトリプレットへと変化するようです。NO直線配位では、NOをエカトリアル位とする三角両錐構造なのに対し、NO屈曲配位においては、NOを頂点配位子とする四角錐構造となります。分子軌道の図を見ると、構造が変化する際にCoのdyz,zxと、NOのπ*軌道の相互作用が小さくなると考えると理解できます。  どうなっているかわかりにくかったので、窒素と酸素がsp2、sp3の状態をそれぞれ書いてみました。屈曲構造(sp2)ではπ*がコバルトから電子を受け取ります。直線構造(sp)では、π*の電子がCo中心に移動すると考えます。このときNOは形式的に+NOとなりますが、分子軌道から分かるように、 π*から電子を一つ捨てることによって三重結合を形成することができるので、NOの酸化電位は比較的低いところ(1.0 V vs SCE 付近)にあることも重要です。直線の+NO配位となると、ちょうどCOが配位した場合と同じような電子構造となり、金属中心からの逆供与も大きくなります。

Synthesis and reactivity of a mononuclear non-haem cobalt(IV)-oxo complex

Bin Wang 1 , Yong-Min Lee 1 , Woon-Young Tcho 1 , Samat Tussupbayev 2,3 , Seoung-Tae Kim 2,3 , Yujeong Kim 4 , Mi Sook Seo 1 , Kyung-Bin Cho 1 , Yavuz Dede 5 , Brenna C. Keegan 6 , Takashi Ogura 7 , Sun Hee Kim 4 , Takehiro Ohta 7 , Mu-Hyun Baik 2,3 , Kallol Ray 8 , Jason Shearer 6 & Wonwoo Nam 1,9  DOI: 10.1038/ncomms14839 概要 Co(IV)オキソ錯体の単離し、その反応性について報告しています。 水素原子引き抜き反応、酸素原子挿入反応に対して活性を有することが明らかになりました。 abstract Co(II)錯体とヨードソベンゼンの反応から、Co(IV)錯体を生成しています。 UV、EPR、質量分析、ラマンからCo(IV)オキソの同定を行っており、EXAFSなどからその構造情報についても考察しました。一般に 後周期遷移金属錯体では、オキソとの結合を考えた際に反結合性軌道に電子が格納されるため、二重結合性を有するオキソ錯体の生成は困難となります。一方今回の錯体では、非結合性の軌道に電子が格納されるため、結合次数を保ちつつオキソ錯体を形成しています。 雑誌会質問 回答 質問 Co(IV)錯体をデカメチルフェロセンを用いて還元した際のEPRの帰属について。 Co(IV) g  = 6.5, 4.4, 2.02 Co(III) EPR scilent g = 4.4, 2.00 はデカメチルフェロセニウム由来のシグナル Co(II) g  = 6.0, 3.2, 1.85 EPRは不対電子を検出する分光手法です。 磁場中の不対電子はゼーマン分裂により、電子間にエネルギー順位差が生じます。 このエネルギー差に対応したマイクロ波を吸収することで、シグナルが観測されます。 生じるエネルギー差ΔEの比例定数gをg値といい、シグナルが観測された時のg値を知ることでその化合物の電子 構造について考