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雑誌会(191009)の回答


The Carboxylate Ligand as an Oxide Relay in Catalytic Water Oxidation
Shaoqi Zhan, Juan Angel De Gracia Triviño, and Mårten S. G. Ahlquist


この論文は、カルボン酸の新たな機能、”Oxide Relay”について報告された論文です。

EVB (Empirical Valence Bond, 経験的原子価結合法)
EVBとは、酵素反応の反応自由エネルギーを決定する近似である。これは、Marcusの電子伝達論では、誤差調整されたハミルトン関数を用いて、溶液中の化学的触媒作用に関する電子伝達に金属を応用することができるという想定に基づくものである。凝集相での反応自由エネルギー計算を容易にする反応力場となる。EVB理論では、反応ポテンシャルエネルギー曲面は反応系と生成系から成り立つと考える。(計算手法などは以下を参照)

参考:分子シミュレーション研究会会誌“アンサンブル”Vol. 11, No.3, July 2009 (通巻47)


PMF (potential of mean force, 平均力ポテンシャル)
 平均力ポテンシャルとは任意の座標に沿った自由エネルギー平面のことである。ある系を計算を用いて取り扱う場合、原子間距離、二面角などの関数としての自由エネルギーに着目する必要がある。PMFはモンテカルロシミュレーションや、分子動力学シミュレーション(MD)によって得られる。これらは反応座標パラメータの関数として系のエネルギーがどのように変化するかを調べるものである。溶媒の微視的構造まで考慮した溶質間相互作用を示すものである。(計算手法などは以下を参照)

参考:分子動力学計算に基づく平均力ポテンシャルを用いた界 面活性剤水溶液のブラウン動力学シミュレーション(基研 研究会「ソフトマターの物理学」,研究会報告)


Q1. DFTPMFはどのように使い分けているのか。
PMFにより分子間距離によるエネルギー変化を求め、DFTで反応全体におけるエネルギー変化を求めている。

Q2. EVB reaction 1 とは錯体1のどのような状態のことを指すのか。

 この表は、錯体中の酸素原子と溶媒中の水の水素原子の結合次数を示すものである。上表2列目、EVB reaction 1では、O–O結合の形成反応のEVBシミュレーションにおける、結合次数を示している。

Q3. 溶液のpHが大きいときO–O結合が律速であると説明しているが、TOFpHによって変わっているため、この段階を律速段階といえるのか。

 例えばpH1大きくなるとすると、理論上はTOF10倍になることが予想されるが、実験的にはpH7から8に変化した場合、TOFは約3倍、pH8から10に上がった場合、TOFは約2倍となっている。このことから、pHによるTOFの増大は認められるものの、律速段階がO–O結合であることの反証になるほどの変化ではないと言える。

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