雑誌会(191204)回答_境田
Catallytically Relevant Intermediates in the Ni-Catalyzed C(sp2)-H and C(sp3)-H Functionalization of Aminoquinoline Substrates.
Pronay Roy, James R. Bour, Jeff W. Kampf, and Melanie S. Sanford
DOI: 10.1021/jacs.9b09109
J. Am. Chem. Soc. ASAP
Q1. Niを用いたCーHヨウ素化反応におけるヨウ素分子の役割
本論文の中で紹介した、CーHヨウ素化反応において、加えられているヨウ素は、経由する有機金属錯体の中心金属である、ニッケルへのヨウ素原子供与剤であるのと同時に、ニッケル中心への酸化的付加を引き起こす、酸化剤としての役割を果たしている。
Q2. C(sp2)-Ni結合をもつNi錯体(2a)の合成法について誰の文献を引用しているか。
無水物とイミドがニッケル0価に酸化的付加するという知見は下に示す、参考文献1によって得られ、続く、脱カルボニル化反応によるニッケル2価錯体の形成は以下の参考文献2によって、得られている。
参考文献
1. Zhang, Y.; Rovis, T. J. Chem. Soc., 2004, 126, 15964–15965.
2. Castano, A, M.; Enchavarren, A, M. Organometallics, 1994, 13, 2262–2268.
Q3. C(sp2)-Ni結合をもつニッケル錯体と異なり、C(sp3)-Ni結合をもつニッケル錯体を基質として用いて、140℃まで、昇温したとき、分子内でCーN結合形成反応が起こるのか。
本論文には詳細な説明は書いていないが、ニッケルと直接結合している炭素に関して、sp3混成軌道をとっているとき、s軌道の成分が25 %であり、sp2混成軌道のそれよりも小さいことから、より、結合が外れやすく、ヨウ素分子の酸化的付加よりも早く、分子内のCーN形成反応が進行し、ラクタムを生成すると考えられる。
Q4. Ni(lll)錯体の結晶構造を決めている論文は他にあるか。
今回の論文のほかにニッケル3価錯体の結晶構造を決めたものにこのようなものがある。
1. T. Fogeron, T. K. Todorova, J-P. Porcher, M. Gomez-Mingot, L-M. Chamoreau, C. Mellot-Draznieks, Y. Li, M. Fontecave. ACS Catal. 2018, 8, 2030−2038.
2. R. Kunert, C. Philouze, O. Jarjayes, F. Thomas. Inorg. Chem. 2019, 58, 8030−8044.
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