A MnIIMnIII-Peroxide Complex Capable of Aldehyde Deformylation
Adriana M. Magherusan, Subhasree Kal, Daniel N. Nelis, Lorna M. Doyle, Erik R. Farquhar, Lawrence Que, Jr., and Aidan R. McDonald
この論文ではBPMP配位子をもつMnIIMnIII-peroxide錯体を報告しています。MnIIMnIII-peroxide錯体としては2番目の報告例で、反応性を持つMnIIMnIII-peroxide錯体としては初めての報告となります。
・混合原子価錯体のクラス分けについて
混合原子価化合物は中心元素間の相互作用の程度によってクラスⅠ~Ⅲに分類されます。
(ロビン−デイの分類(Robin-Day classification))
クラスⅠは相互作用がほとんどない状態。
クラスⅡはクラスⅠとⅢの中間状態で、電子移動に要するエネルギーが低く、原子間の電子移動による吸収(原子価間電荷移動吸収帯)が可視から近赤外領域に現れます。
クラスⅢは相互作用が極めて強く、原子価状態がまったく判別できない状態で、クラスⅡと同じく、原子価間電荷移動吸収が見られます。
論文中にはクラス分けについての記述はありませんが、EPRの結果から非等価であると考えていること、また反応機構の考察ではMn間で相互作用があると考えていることからクラスⅡに分類できるのではないかと思います。
・deformylation反応について
筆者らはPPA, CCAとの反応について、疑1次速度定数を基質の濃度に対してプロットした結果では基質濃度が低い場合はその相関は線形的にとなり、高い場合は指数関数的となると述べています。この結果について平衡反応であるMn錯体の求核攻撃①と転位反応②からなり、①の反応は平衡であるために低濃度の場合は平衡があまり進まず求核攻撃①が律速となり、平衡が進み高濃度の時は転位反応②が律速となると考えています。しかし、この相関についての式の記述やこの反応機構を裏付ける実験はありません。
Mn-peroxide錯体のdeformylation反応についての他の報告ではCCAの反応では求核攻撃によるもので、PPAの反応ではH原子移動を経て起きると考えられていることが多いです。
Timothy A. Jackson. et al, Dalton Trans., 2018, 47, 13442.
PPAの詳細な反応機構については計算によってSam P. de Visserらが報告していて、こちらの報告においてもH原子移動を経ていると考えています。
Sam P. de Visser. et al, J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 18328−18338.
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