Disproportionation Equilibrium of a μ-Oxodiiron(III) Complex Giving Rise to C-H Activation Reactivity: Structural Snapshot of a Unique Oxoiron(IV) Adduct
Angew. Chem. Int. Ed.
DOI : 10. 1002/anie.201900683
この論文では、比較的安定なμ-oxodiiron(III)錯体の不均化平衡によって反応性の高いOxoiron(IV)錯体を取り出すことで酸化剤が存在せず、さらに光照射されていない状態にもかかわらずDHAを酸化し、アントラセンにすることが分かったという内容が取り上げられています。
スキーム1
Q1.スライドのp.8~9において、Massの解釈及び2つの実験は同条件下で行われたものなのか、また2つの実験において溶媒をアセトニトリルからプロパンニトリルに代えることで何を調べたかったのか。
スキーム2
スライドのp.8では、ESI Massにおいてm/z = 1271が上のスキームの錯体1、m/z = 1495が錯体1^Me16、m/z = 1383が錯体1^Me8に相当している。図1は、アセトニトリル溶媒中で錯体1と錯体1^Me16を加えた後、撹拌すると時間が経つにつれて錯体1が減少し、錯体1^Me8が増加したことを示している。これは、酸化剤や光照射を必要とせずに2つの鉄原子同士を繋ぎとめている酸素原子は開裂し、さらに開裂した後に生成すると考えられる錯体2 (スキーム1参照)と1^Me16が開裂してできるoxoiron錯体(以下2^Me8)が反応し、1^Me8が生成したためと考えられる。錯体1ならびに錯体1^Me16、錯体1^Me8の開裂は、論文内では求核性の溶媒であるアセトニトリルに起因する反応であるとしている。
図1
この反応は平衡反応であるため、平衡を傾けるために錯体1^Me16の量を過剰にする、あるいは錯体1^Me16を系中に加え続けるなどすることが必要であると考えられる。ESI Massの結果より、本実験では過剰量の1^Me16を入れておいたと考えられる。
次に、スライドのp.9よりp.8では溶媒としてアセトニトリルの代わりにプロパンニトリルが用いられている。溶媒を代えることによって何が分かるのかというとμ-oxodiiron錯体の開裂が求核性の溶媒ならアセトニトリルでなくても生じうるのかということである。
図2
また図2右側の図より、溶媒がアセトニトリルの時とプロパンニトリルの時で開裂反応に大きな違いは見つからなかった。従って、求核性の溶媒ならばμ-oxodiiron錯体の開裂は起こりうることが分かった。
Q2.スライドのp.7の式(ⅰ)はどのようにして誘導されたのか。
本論文が参考にしている論文によるとMichaelis-Mentenの式より導出したとある。よって導出は以下のようになる。
rate = d[anthracene]/dt = k2[2][DHA]
d[2]/dt = k1[1]-k-1[2][3]-k2[2][DHA] = 0
[2] = k1[1]/(k-1[3]+k2[DHA])
rate = k1k2[DHA][1]/(k-1[3]+k2[DHA])
Q3.錯体2などのFe (IV) 錯体は一重項なのか三重項なのか。
oxoiron錯体は八面体構造であるので、pauliの排他律とフントの規則より、S = 1となる。従って、Fe (IV) 錯体は三重項である。
Angew. Chem. Int. Ed.
DOI : 10. 1002/anie.201900683
この論文では、比較的安定なμ-oxodiiron(III)錯体の不均化平衡によって反応性の高いOxoiron(IV)錯体を取り出すことで酸化剤が存在せず、さらに光照射されていない状態にもかかわらずDHAを酸化し、アントラセンにすることが分かったという内容が取り上げられています。
スキーム1
Q1.スライドのp.8~9において、Massの解釈及び2つの実験は同条件下で行われたものなのか、また2つの実験において溶媒をアセトニトリルからプロパンニトリルに代えることで何を調べたかったのか。
スキーム2
スライドのp.8では、ESI Massにおいてm/z = 1271が上のスキームの錯体1、m/z = 1495が錯体1^Me16、m/z = 1383が錯体1^Me8に相当している。図1は、アセトニトリル溶媒中で錯体1と錯体1^Me16を加えた後、撹拌すると時間が経つにつれて錯体1が減少し、錯体1^Me8が増加したことを示している。これは、酸化剤や光照射を必要とせずに2つの鉄原子同士を繋ぎとめている酸素原子は開裂し、さらに開裂した後に生成すると考えられる錯体2 (スキーム1参照)と1^Me16が開裂してできるoxoiron錯体(以下2^Me8)が反応し、1^Me8が生成したためと考えられる。錯体1ならびに錯体1^Me16、錯体1^Me8の開裂は、論文内では求核性の溶媒であるアセトニトリルに起因する反応であるとしている。
図1
この反応は平衡反応であるため、平衡を傾けるために錯体1^Me16の量を過剰にする、あるいは錯体1^Me16を系中に加え続けるなどすることが必要であると考えられる。ESI Massの結果より、本実験では過剰量の1^Me16を入れておいたと考えられる。
次に、スライドのp.9よりp.8では溶媒としてアセトニトリルの代わりにプロパンニトリルが用いられている。溶媒を代えることによって何が分かるのかというとμ-oxodiiron錯体の開裂が求核性の溶媒ならアセトニトリルでなくても生じうるのかということである。
スキーム3
結果、プロパンニトリルが溶媒であってもμ-oxodiiron錯体の開裂は生じていた。(図2参照)
図2
また図2右側の図より、溶媒がアセトニトリルの時とプロパンニトリルの時で開裂反応に大きな違いは見つからなかった。従って、求核性の溶媒ならばμ-oxodiiron錯体の開裂は起こりうることが分かった。
Q2.スライドのp.7の式(ⅰ)はどのようにして誘導されたのか。
本論文が参考にしている論文によるとMichaelis-Mentenの式より導出したとある。よって導出は以下のようになる。
rate = d[anthracene]/dt = k2[2][DHA]
d[2]/dt = k1[1]-k-1[2][3]-k2[2][DHA] = 0
[2] = k1[1]/(k-1[3]+k2[DHA])
rate = k1k2[DHA][1]/(k-1[3]+k2[DHA])
Q3.錯体2などのFe (IV) 錯体は一重項なのか三重項なのか。
oxoiron錯体は八面体構造であるので、pauliの排他律とフントの規則より、S = 1となる。従って、Fe (IV) 錯体は三重項である。
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