ヒドロゲナーゼの活性種の結晶構造です。FeとNiを架橋するヒドリドがきっちり見える分解能も驚きですが、水素分子からヒドリドを取った時にのこるプロトンが、ニッケルに配位するシステイン上に乗っていると いうことまで見えているのが驚きです。配位子上でのプロトンのやり取りは、よりフォーカスされて行く事と思います。
- Nature
- 520,
- 571–574
- doi:10.1038/nature14110
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ヒドロゲナーゼは、金属触媒部位で水素分子をプロトンと電子へと可逆的に変換する酵素である。この酵素の構造と機能を理解するには、豊富に含まれる水素の位置の検出が極めて重要だが、タンパク質のX線結晶構造解析では、水素原子の検出は重大な問題の1つである。水素原子は回折への寄与が非常に弱い上に、単結晶の品質ではサブオングストロームの分解能を得るには不十分な場合が多いからである。今回我々は、標準型の[NiFe]ヒドロゲナーゼ(分子量約91.3 kDa)の結晶構造を、分解能0.89 Åで決定した。厳密に嫌気的に単離することにより、ヒドロゲナーゼを特定の分光学的状態、すなわち活性な還元型Ni-R(亜型のNi-R1)の状態で得ることができた。高分解能、適切な精密化法、入念なモデル作成によって、水素原子の大部分について、構造内での位置を明らかにできた。これによって、水素分子がヘテロリティックに開裂して生じた産物が直接検出され、ヒドリド(H − )はNiとFeを架橋しており、プロトン(H + )はシステイン配位子の硫黄に結合していることが分かった。Ni–H − とFe–H − の結合の長さは、それぞれ1.58 Åと1.78 Åだった。さらに、活性部位のFe–CO配位子、Fe–CN − 配位子の帰属が明らかになり、ヒドロゲナーゼ内の水素結合ネットワークと優先的なプロトン輸送経路が判明した。これらの結果は、タンパク質の高分解能構造から得られる正確で包括的な情報が、中性子回折法やNMR構造解析といった方法の代わりになることを示している。
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