- Nature
- 517,
- 227–230
- doi:10.1038/nature14043
最近の研究で、酵素の拡散率は触媒反応中に基質依存的に増大することが示されている。この観察結果は複数の系で報告されていて、特徴も調べられているが、この現象が生じる仕組みは正確には分かっていない。熱量測定法は、酵素触媒反応からのエンタルピーを決定するのに用いられることが多く、そのために触媒反応の機構に関する重要な手掛かりが得られることがある。従来のバルク熱量測定に含まれるアンサンブル平均では、反応で交換されたエネルギーが触媒に及ぼす可能性のある一過性の影響を調べることができない。本論文では、単一分子蛍光相関分光法によるデータを得て、確率論的理論の枠組みを使って解析し、単一酵素分子の拡散促進と反応中に放出された熱の間の機構的関連を明らかにした。触媒反応中に放出された熱が、非対称的な圧力波を発生させ、それがタンパク質–溶媒の界面に差異的な応力をもたらし、一過的に酵素の質量中心を動かす(化学音響効果;chemoacoustic effect)と、我々は考えている。触媒反応中に放出されたエネルギーに酵素がどのように反応するのかという問題についてのこの新しい見方から、反応熱が酵素の構造的完全性や内部の自由度に与えると思われる影響が示唆される。
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