Robert J. Mayer and Armin R. Ofial*
過酸化水素と6aの反応では、下図のようなバーオキシド分子が出てくるみたいです。
Department Chemie, Ludwig-Maximilians-Universität München, Butenandtstraße 5−13, 81377 München, Germany
Org. Lett., Article ASAP
DOI: 10.1021/acs.orglett.8b00645
Publication Date (Web): May 9, 2018
酸化剤と金属錯体の反応は、酸化剤のローンペアが金属イオンを攻撃するところから開始されます。その速度について、私は漠然としか考えてなかったのですが、種々の酸化剤の求核性を定量的に評価した論文が出ていたので紹介します。
結果から言いますと、上のフィギュアのNの値が大きいものほど、求核性の高い酸化剤となります。
Hydroperoxideアニオンと比較して、過酸アニオン類は非常に大きな求核性を持っていることがわかります。また、ハイポクロライドアニオン(ClO–)やt-butylperoxideなどは、やや求核性が劣るようです。(赤色が今回実験したアニオン類で、右の黒字は先行研究の結果です。実験は20度の水中)
実験は、程よい求電子性を持つ下図のような色素と反応させ、色の変化を追跡することで、反応速度を決定しています。
求核、求電子反応には、電位のような便利な指標がないのですが、ドイツのメーヤー教授が中心となって、種々の試薬の求核性、求電子性のスケーリングが進められて来ました。(参考:Mayr’s comprehensive nucleophilicity scale)なにかエネルギー単位に換算できるわけではない(と思う)のですが、求核種の指標Nと、求電子種の指標Eを、下式に入れると、反応速度が概算できるとされています。Sは溶媒に依存する定数です。
Eが分かっている求電子剤と反応させ、速度定数を求めることで、Nが求められます。
log k (20°C) = S(N + E)
塩基性度と反応速度に、ある程度の相関はあるのですが、塩基性度で完璧に速度が決定されるわけではないようです(下図)。求核剤の脱溶媒和が、反応の活性化エネルギーを決定する上で重要なステップであるそうです。
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