Q. ナフタレンの水酸化の位置選択制について。
A.
今回、ナフタレンのHOMOの軌道について(電子が取られてナフタレンラジカルカチオンが生成して反応が始まるので)考えると、ナフタレンの軌道はベンゼンとブタジエンのπ軌道の相互作用から考えることができます。
ブタジエンの軌道2(青)は反対称でかつエネルギーが高く不安定であるため、この軌道がナフタレンのHOMOの主成分となり、ベンゼンの反対称軌道3,5(赤)との相互作用を考える必要があることが予想されます。
例えば、軌道3と軌道2からできる軌道は同符号同士の重なりから結合性が増加し軌道3より安定化した軌道Aと逆の理論から不安定化した軌道Bが構成されます。
また第二段階として軌道Bと軌道5の相互作用を考えますが、軌道Bは被占軌道で軌道5は空軌道であることからHOMO軌道への寄与は軌道Bの方が格段に大きいことがわかります。それゆえ、ナフタレンのHOMO軌道への寄与は単体ブタジエンと同じであることになり、α位がβ位よりも大きいという風になります。
そのため本文中でも示したように1,4-ジナフトールを経て、1,4-ナフトキノンが酸化生成物として得られるのが妥当だと言えます。
コメント
一点補足させてください。
ナフタレンのα位とβ位の反応性を比較すると、α位のほうが格段に高いのは、ブタジエンのHOMOでは末端炭素上のp軌道の係数が大きい点についても述べると良いと思います。ぼくも記憶がおぼろげだったのですが、ヒュッケル法についての講義で、みなさん一度、共鳴安定化エネルギーや、各分子軌道における原子軌道の係数の導出はやっているかと思います。
参考:http://www.comp.tmu.ac.jp/qc/ryosi2/2012-10-17.pdf
http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/phychem/maeda/kougi/BQC/2011/JUN17.pdf
http://shimaphoto03.com/science/molecular-orbital/