Q. 一番下のCVは何を表しているのか?
A. これは-40℃、アセトニトリル中におけるTBA-ClのCVを表しており、他のCVと異なり上に凸の部分が観測できません。このような形となる理由については、Cl-の状態における電極電位を正方向に掃引することでCl・+e-
⇄
Cl-の反応が左方向に進み酸化波を生じるけれど、この平衡反応によって生じたCl・が二つ合わさってCl2が生成するため、平衡反応が右方向には進まないことに起因していると考えられます。
Q. なぜTBA-ClのCVを載せているのか?
A. 標準電極電位の値を比較するとE゜(OCl・/OCl-)=1.15V vs SCE、E゜(Cl・/Cl-)=2.19V
vs SCE、E゜(Cl2/Cl-)=1.116V
vs SCEであり、E゜(OCl・/OCl-)、E゜(Cl2/Cl-)の値がE
(I/II)の値と近い値をとっているため温度や溶媒条件を変えることによってCompIを
CompIIに還元できる可能性があります。しかし、過剰の次亜塩素酸塩や基質の存在下
においてはCompIと塩化物との反応はほとんど起こりません。これは、CompIと次亜
塩素酸塩や基質との反応に比べてかなり遅い反応であることによります。つまり次亜
塩素酸の存在下では次亜塩素酸塩によってCompIが還元されます。よってFigure S1の
一番下のCVは、(Cl・/Cl-)について電極電位を正方向に掃引しても還元波が出現しない
ということを視覚的に示すために載せているのだと思います。
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