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Mutable Properties of Nonheme Iron(III)–Iodosylarene Complexes Result in the Elusive Multiple-Oxidant Mechanism

Mutable Properties of Nonheme Iron(III)–Iodosylarene Complexes Result in the Elusive Multiple-Oxidant Mechanism

Yiran Kang#Xiao-Xi Li#Kyung-Bin Cho§ Wei Sun Chungu XiaWonwoo Nam*§ , and Yong Wang* 
 State Key Laboratory for Oxo Synthesis and Selective Oxidation, Lanzhou Institute of Chemical Physics, Chinese Academy of Sciences, Lanzhou 730000, China
 University of Chinese Academy of Sciences, Beijing 100049, China
§ Department of Chemistry and Nano Science, Ewha Womans University, Seoul 03760, Korea
J. Am. Chem. Soc., Article ASAP
DOI: 10.1021/jacs.7b03310
Publication Date (Web): May 19, 2017
Copyright © 2017 American Chemical Society



本論文では、Fe(lll)-iodosylbenzene 錯体 [Felll(tpena-)OIPh]2+ (1) の構造と反応性の関係について計算化学的に考察を行っています。

DFT計算によりチオアニソールのスルホキシド化において基質が近づいてくる過程で、錯体1は2つの構造(高原子価Fe-oxo錯体と単量体PhIO種)を取りうることを示し、
さらに、基質のチオアニソールが反応系に導入される段階で、2つの配向モードがあるということを示しました。

以上の計算結果より、反応メカニズムはScheme 2に示すように、チオアニソールのスルホキシド化において2つの異なる反応機構

・電子移動を伴うO-I結合の開裂
・直接的なO原子移動機構(Direct Oxygen-atom transfer: DOT)

が提唱されました。

           

これまで高原子価heme/nonheme 金属オキソ種によるチオアニソールのスルホキシド化は、DOT機構が広く受け入れられていましたが、本論文では新たな電子移動を伴うO-I結合の開裂機構が提案されました。

この結果により、複雑なmetal-iodosylケミストリーへの理解の深まりにつながると述べられています。
















コメント

Yuma Morimoto さんの投稿…
ヨードソベンゼンは、活性種生成のための酸化剤として用いられることの多い試薬でした。近年、Namらによって、ヨードソベンゼンとメタルのアダクトが真の活性種であるという報告がなされております(有機合成化学者の観点からは自然な話でしょうが)。この論文は、そのケミストリーを拡張するような報告です。
ただ、注意すべき、というか、残念というところが、鉄とくっついていないヨードソベンゼンからのオキソトランスファーが一番活性化エネルギーが低いとのこと(Figure 4のインセット)。著者らは、一旦鉄と酸素がくっつくと、その乖離にエネルギーが必要だから、この系では考えなくていいといっていますが。。。
ヨードソベンゼンは溶液中ではポリマーになっていることが知られていることからも考えると、実際には鉄にくっついたヨードソベンゼンをフリーのヨードソベンゼンが引き剥がしたり、いろんなことが起こりそうです。

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