Tuning the Geometric and Electronic
Structure of Synthetic High-Valent Heme Iron(IV)-Oxo Models in the Presence of
a Lewis Acid and Various Axial Ligands
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 5942–5960.
DOI:
10.1021/jacs.9b00795
本論文は、様々な置換基をアキシアル位に有した、もしくはルイス酸付加体を有した鉄(II)ポルフィリン錯体、鉄(IV)オキソポルフィリン錯体を合成し、同定に成功した。また、鉄(IV)オキソポルフィリン錯体にルイス酸が付加することによる、酸化力の向上を確認した。
Q, Badger’s ruleとは何か?
Badger’s ruleはBadgerによって提唱された経験則であり、rRにより得られた振動数を用いることで原子間の結合長を求めることができる規則であり、多原子分子において非常に有用であり適用されていた(式①)。
ここで核間距離は、求めたい結合長の両端の原子によって決定される値である。
Michael T. Greenはこの経験則を鉄ポルフィリン錯体でも適用可能であることを証明するための実験を行った。その結果、17種のヘム(○)(Tab)についてDFT計算によって導かれたFe-O間の伸縮振動数、結合長(Table 1)をプロットするとBadger’s ruleを表す直線(Figure 1)が得られた。このことから、Budger’ ruleが分子量の大きな化合物でも適応可能であることが示された。
今回は鉄ポルフィリン錯体への適用であったが、他の錯体についても経験的な定数を求めることで、伸縮振動数から結合長を求めることができて有用であると考える。
Q. F8Cmpd-IIにLewis酸として2,6-Lutidinium triflateを添加しているが、triflateのアキシアル位への配位は起こっていないのか?
F8Cmpd-IIに1eqの2,6-Lutidinium triflateを添加し、得られたメスバウアースペクトルは以下のようになる。このスペクトルは2つのピークが出現しており、それぞれのδ、ΔEQの値は以下のようになる。ここで錯体が六配位を取る場合、ΔEQの値は1.0-1.5くらいになるため、検出された錯体はともに五配位であるといえるのでtriflateの配位は起こっていないといえる。
コメント