Nucleophilic versus Electrophilic Reactivity of Bioinspired Superoxido Nickel(II) Complexes
Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 14883 –14887
DOI: 10.1002/ange.201808085
電子供与性の高いビウレット配位子を用いて新規のNi(II)スーパーオキソ錯体の合成を行い、この錯体と、先行研究において合成されていたβ-ジケチミネート配位子を用いたNi(II)スーパーオキソ錯体の求核・急電子の反応性の違いについてDFT計算を用いて考察を行った論文です。
Q. Cu=Oが活性種として再び反応しないのか。
プレゼン資料にあった求核的反応のメカニズムですが、SIにより詳細なスキームが記載されておりました。(下図参照)それによるとCu=Oが基質のO隣の水素を引き抜く事で 、Cu-OHが生成し、ヒドロキソ錯体が活性種となることで反応が進行するというスキームが提案されていました。
A. R. McDonald and coworker, Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 5946 – 5950
この質問については、強磁性相互作用と反強磁性相互作用のどちらの方がエネルギー的に安定であるかとの質問とも重なるところが多いかと思われるのですが、実際に詳細な考察はなされていないのが現状です。
質疑応答でも少し触れたように、4重項励起状態においては、Ni(II)高スピン(d8)の不対電子2つとスーパーオキソの1つの不対電子との強磁性相互作用を起こし、スピンの向きが揃うことによって、磁気モーメントとしては大きくなっています。反対に、2重項励起状態においては、それぞれの電子が反強磁性相互作用を起こすことによって下図に示すような電子状態をとっているのではないかと考えます。
元の相互作用を起こしていない状態と比べると、この状態は全体のLUMOが低下していると考える事ができるため、HAAのような求電子的な反応においてはβスピンが多い方が(反強磁性相互作用を起こす方が)反応性は上昇するのではないかと考えます。
Q. ビウレットの共鳴について
プレゼン資料中のビウレットの共鳴構造について、酸素原子が共鳴に寄与していなかったために、下の共鳴構造が正しいものであると考えられます。ここにお詫びと訂正申し上げます。
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