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Selective Aerobic Oxidation of Methylarenes to Benzaldehydes Catalyzed by N-Hydroxyphthalimide and Cobalt(II) Acetate in Hexafluoropropan-2-ol

Angew. Chem. Int. Ed., 2017, 56, 1-5
Eden Gaster, Sebastian Kozuch, and Doron Pappo*
First published: 
DOI: 10.1002/anie.201702511
E. Gaster, Dr. S. Kozuch, Prof. Dr. D. Pappo
Department of Chemistry, Ben-Gurion University of the Negev Beer Sheva, 84105 (Israel)
E-mail: pappod@bgu.ac.il



メチルアレーンの酸化によるベンズアルデヒドの生成反応においてこれまで過酸化物として安息香酸が生成してしまうという問題点があった。 先行研究の段階では高いconversionと選択性の両方が達成される反応系が見つかっていなかったが、この論文では溶媒にヘキサフルオロプロパン2オール(HFIP)を用いることでそのふたつを達成している。


その仕組みは反応の過程でHFIPはアルデヒドと強い水素結合を形成し、ラジカル中間体(PhC(O)•)を不安定なものにすること、C–H結合のBDEを高くすることに起因する。実際に計算で溶媒と水素結合したベンズアルデヒドのC–H結合のBDEとただのベンズアルデヒドのBDEを比較し、前者が15KJ/mol高いという結果も示されている。

アルカン類の選択的水酸化に活かされるかはちょっと難しいかもしれないですが、アルコールが安定になるような反応系を作り出すことで過酸化物の生成を防げるかもしれないという点では参考になると考えました。


コメント

Yuma Morimoto さんの投稿…
フタル酸イミドのN-オキシドとコバルトを使った反応系は、酸素を酸化剤として用いるものの中で、現状最も洗練されたものと言えるかもしれません。関大の石井先生という方が精力的に研究されていました。
この報告も、現象論的には大変興味深いものです。
クエスチョンとしては、アルデヒドの酸化が水素引き抜きで進行するというのはどうでしょうね。一般に、アルデヒドのα位のBDEは高く、求核的な酸化活性種がカルボニル炭素を攻撃されるステップから反応が進行するものだと私は思っています。
もう一点、水素結合で、BDEが大きく(15kJmol-1も!)変化するというのもちゃんと知りたいところです。Ingoldらが、フェノールの水酸基のプロトンを受容するような溶媒は反応を阻害するという研究をしていますが、系統的な理解は進んでいないところだと思います。

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