Catalytic C-H Amination Mediated by Dipyrrin Cobalt Imidos
Angew.J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 7797-7806
DOI : 10.1021/jacs.9b01262
この論文では、ハイスピンのCo3価イミン錯体を活性種とし、補助配位子として、ピリジンを用い、反応を選択的に進行させたことによる、分子内での触媒的アミノ化反応が取り上げられています。
Q1. 鉄イミン錯体とトルエンの分子間アミノ化反応はどのように同定されたのか。
まず、出発原料の鉄イミン錯体はトルエンに室温で溶かした時、安定でした。しかし、80 ℃にまで加熱すると、ベンジル位において、C-Hアミノ化が起こったことがLC-MSによって、分かりました。さらに、重水素同位体効果の測定を行ったところ、以前、同じグループが
(ArL)FeCl(OEt)2 の分子間アミノ化において、得られたデータと類似しており、さらに、段階的水素引き抜きとラジカル再結合のメカニズムとも矛盾がなく、一致していたため、このようなメカニズムで進行している、と同定しました。
Q2. コバルトイミン錯体の分子軌道において、dz2 が安定化しているのはなぜか。
コバルトイミン錯体は、モノボランに代表されるようなD3h 点群が示すのと似たような分子軌道の構造を持ち、dz2 軌道がCo=Nの結合と重なるため、最不安定化するはずでありますが、Coの4S軌道と3dz2 軌道は軌道の対称性が一致しており、相互作用するため、3dz2 軌道は安定化します。
Q3. ジョブプロットはどのようにして、求めているのか。
コバルトイミン錯体に対して、補助配位子として用いている、ピリジンを加えていった時のH-NMRにおけるケミカルシフトの変化量を追跡することで、ジョブプロットを導いています。横軸にはイミン錯体の系全体に対する割合を、そして、縦軸には横軸の値にケミカルシフトをかけたものをとっています。
Q4. 系中で生成するラジカル化合物をどのようにして同定したのか。
本論文中にはラジカル化合物については、同じグループが以前に鉄錯体で同じ配位子を用いて、ラジカル化合物が生成した時と同じ反応性であったことからラジカルが出ていると同定しました。
鉄錯体を用いた時、EPR、メスバウアスペクトルによってラジカル化合物であることを同定していました。
Q5. 系中で生成したコバルトイミン錯体の収率はいくらか。
系中ではコバルトイミン錯体は91 %の収率で生成しました。
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