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M−O Bonding Beyond the Oxo Wall: Spectroscopy and Reactivity of Cobalt(III)‐Oxyl and Cobalt(III)‐Oxo Complexes

Erik Andris  Rafael Navrátil  Dr. Juraj Jašík  Dr. Martin Srnec  Mònica Rodríguez  Prof. Miquel Costas  Prof. Jana Roithová


Angew. Chem. Int. Ed.,2019,58,2.
First published: 13 May 2019
https://doi.org/10.1002/anie.201904546


 この論文では気相中で高原子価ガス状コバルトオキソ錯体を調製し、その物性について質量分析および赤外光分離分光法を用いてキャラクタリゼーションを行っています。
 一般に第8族以降の金属オキソ錯体と比べ第9族以降の金属オキソ錯体の報告例は少なく、このことはオキソの壁と呼ばれています。
 筆者らは第9族のコバルトを用いたオキソ錯体は高い反応性を持つだろうと考えイオン分光法およびイオン分子反応による完全なキャラクタリゼーションを行うために、十分長く存続できる気相中で錯体の調製を行ったと述べています。
 今回行った極低温気相イオン分光法では3つの利点があります。1つ目は対象のイオンが真空中で分離されるためヘリウム原子以外との相互作用が起こらない点。2つ目はイオンが数Kまで冷却されることで基底電子状態および基底振動状態となる点。3つ目はスペクトルが質量選択されたイオンに結び付けられるため、通常の溶液系で存在する干渉を受けずに済む点です。これにより同じm/zを持つ異性体イオンを検出しキャラクタリゼーションを行うことができます。
 コバルトオキソ錯体の調製は[(N4Py)CoII(ClO3)]を電気化学的に酸化することで行っています。詳細なキャラクタリゼーションについては質量分析、ヘリウム標識赤外分光法(IRPD)、可視光解離分光法(visPD)といった分光法、炭化水素との反応性の検討、理論計算により行なっているようです。
 結論としてはコバルト(III)オキソ錯体はセクステットの鉄(III)オキソ錯体と同程度の強度のコバルト–オキソ結合を有していたものの、C–H、S–H結合に対しての反応性はなかったそうです。
 一方でコバルト(IV)オキシルでは非常に弱いコバルト–オキシル結合を有しており、こちらではシクロヘキサンからの水素原子引き抜きを確認できたそうです。
今回調製したコバルトオキソ錯体
今回の論文の結果を踏まえると、コバルトオキソ錯体が高活性なC–H結合酸化触媒開発において有望なターゲットであると考えられます。

コメント

Yuma Morimoto さんの投稿…
三価のときより、四価のときのほうが、Co–O間の結合が、弱くなると言うことでしょうか。
静電的なファクターだけで考えるとありえない話ですが、三価のときはハイスピンでπが空いているのに対して、
四価になると、ロースピンになって、π軌道が埋まった絵が書いてあるのを見ると納得です。
4Kではロースピンが優勢のようですが、温度が上がるとハイスピンが誘起されて、反応性が変わったりしそうですね。

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