Activation of a Non-Heme Fe(III)–OOH by a Second Fe(III) to Hydroxylate Strong C–H Bonds : Possible Implications for Soluble Methane Monooxygenase
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 1-6
DOI : 10.1002/anie.201903465
Angew. Chem. Int. Ed. 2019, 58, 1-6
DOI : 10.1002/anie.201903465
この論文では[FeIII(β-BPMCN)OOH]2+に三価の鉄を加えることで、ハイドロパーオキソの末端側の酸素に相互作用させ酸素酸素結合を開裂しやすくし鉄五価錯体を生成し、シクロヘキサンやベンゼンを水酸化しやすくする反応が取り上げられています。
Q1. 錯体に対して2当量のFe3+をルイス酸として加えたときに最もTONが大きくなっているのはなぜか。
Q2. ルイス酸としてがSc3+または、Fe3+を加えている。TONはSc3+を加えたときの方がFe3+を加えたときよりも小さいが、速度定数はSc3+を加えたときの方がFe3+を加えたときよりも大きい。その理由は何か。
まず、1当量目のルイス酸が[FeIII(β-BPMCN)OOH]2+の末端の酸素原子と相互作用することで酸素酸素間の結合の不均一開裂を促進します。次に、2当量目のルイス酸が金属に配位した酸素原子と相互作用することで[FeIII(β-BPMCN)(O)]2+の生成を促進します。このことから、Fe3+を2当量加えたときに最もTONが高くなることが説明できます。
Q2.に関してですが、[FeIII(β-BPMCN)OOH]2+との反応がFeとScとでは異なることが考えられます。論文中ではFeIV(O)MIII(M=FeまたはSc)、あるいはFeIV(O)とFeIIIから[FeV(β-BPMCN)(O)]2+が生成することが述べられています。TONがFe3+を加えたときの方が大きいことよりのFe3+を加えたときの方は[FeV(β-BPMCN)(O)]2+が生成するルートで主に反応が進行するのに対し、Sc3+を加えた場合は[FeV(β-BPMCN)(O)]2+が生成しない別の反応経路で進行するものがあることが考えられます。このため、Sc3+を加えたときの方がFe3+を加えたときの方がTONは小さいが、速度定数はSc3+を加えたときの方がFe3+を加えたときよりも大きいと考えられます。
Q3. FeIII(OTf)3がアセトニトリルに溶けているときの状態はどのようなものか。
Q4. FeIII(OH)3のような沈殿物が生成する可能性は考えられないか。
Q5. (FeIII(OH))2+として存在するのか。
FeIII(OTf)3がアセトニトリル溶媒に溶けている場合の状態はFeIII(NCCH3)3(OTf)3のような状態になっていると考えられます。FeIII(OTf)3がルイス酸として[FeIII(β-BPMCN)OOH]2+の末端の酸素原子と相互作用し酸素酸素間の結合の不均一開裂を起こした後は、FeIII(NCCH3)2OH(OTf)3のような状態で存在していると考えられます。また、FeIII(OTf)3は[FeIII(β-BPMCN)OOH]2+よりも多く加えられているため、FeIII(OH)3のような沈殿物が生成する可能性は少ないと考えられます。
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