Wenjie Tao, Jamey K. Bower, Curtis E. Moore, and Shiyu Zhang*
Department of Chemistry and Biochemistry, The Ohio State University, 100 West 18th Avenue, Columbus, Ohio 43210, United States
DOI: 10.1021/jacs.9b03635 J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 10159−10164
この論文はWarren groupに所属していたShiyu Zhangさんらによる論文です。
今まで結晶構造の報告例のない、2核銅μ-オキソ, μ-ニトロシル錯体を2種類の方法で合成し、その結晶構造、反応性について報告しています。
今回この2核銅μ-オキソ, μ-ニトロシル錯体が合成できた理由として、2つの銅の間の距離が重要であると考え、構造は似ているが2核構造を取らない(つまり2つの銅間距離の制限がない)配位子を用いて検証を行っています。その結果、2つの銅の間の距離が大きい(4.3Å)とNO結合の開裂は起きずに亜硝酸イオンとして存在する一方で、2つの銅の間の距離が制限され小さい(2.8Å)と、亜硝酸イオンとして存在するより、今回のようなμ-オキソ, μ-ニトロシルとして存在する方が安定となるそうです。
2核錯体は複雑で難しいですが、今回のようなμ-ニトロシル構造を取ることのできる錯体なら、亜硝酸イオンを用いることで、今回のような求核的なオキシルドナーとして機能させることも不可能ではないのではないかと筆者らは期待しています。
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